yami to hikari

闇と光、 自分にもあり、隣人にもある。

カテゴリ: 想い出

今の仕事に就く前に、私がやってみようと本気で思った仕事、それがタクシードライバーでした。
今思うと何と大それたことを・・・と思うのですが、本気でした。
それまでスーパーの6時間パートで食い繋いでいたけど、
3回ギックリ腰をやった身には立ち仕事はキツく、
身体の負担が少ない事務仕事は、40代後半を雇ってくれるような所なんて少なく、
しかし、今正社員にならないともう後がない、という焦りから、
辿り着いた答え、「タクシードライバー」。

面接に行ったのは、地元の大手、評判の良いタクシー会社でした。
60歳手前ぐらいの面接官の方、渡した履歴書に目を落とし、やや暫くして、
「・・・どうしてうちに?」
教育系の短大を出て、事務畑で働き、専業主婦歴も長かった私です。
イコールで結びつかない仕事ですよね。
どう答えていいのかわからず、
「離婚しまして・・・何とか食べて行かなくてはならず・・・立ち仕事をしてたんですが身体もキツくなって・・・えーと・・・」
本気でなろうと思ったから面接受けたんですが、突っ込まれると志望動機が実に曖昧なことに自分で気づきました。
面接官の方はざっくばらんな元運転手さんという感じの方で、そのあと色々説明してくださいました。

・女性は日勤オンリー
夜勤は危険なので老人と女性は日勤のみです。
・日勤の給料は11万ぐらい
定時より皆さんかなり早く出てます。それぐらい頑張って11、2万ぐらい。
・日勤には保証給制度はありません
保証があるのは隔日勤務です。
・クラッチ車です
クラッチだけど大丈夫?どうしてもオートマが良ければ考えますけど基本はクラッチ車です。
・2種免許取りに行ってもらいます
提携してる教習所だからまず落ちることはないよ。
・この辺の土地勘ある?
うちはほとんどこの近隣のお客さんが近距離利用するの。この辺は入り組んでるけど大丈夫?

・・・他にもいろいろ詳しく、丁寧に、1時間半ぐらいの時間を割いて説明して頂きました。
自分の認識不足が、甘さが、途中からとても恥ずかしい気持ちになりました。
思ってたよりずっと、タクシードライバーって大変な仕事なんだ・・・!!

最後に面接官は私に名刺を下さいました。
「〇〇さん、もう一度家に帰ってよく考えてみて。それで気持ちがはっきり決まったら電話ください。そしたら私、すぐ教習所押さえて採用の段取りしますから。もう一度考えてみて」

考える猶予が与えられました。帰り道、運転しながら私は「無理だ」と、もう結論を出していました。
歩合でご飯を食べて行くということ。景気回復を実感できない世間でそれは厳しい。
ドライバーさんは2時間も早出しているとは。それでそんなお給料とは。
そんなに厳しい世界でたまに出会う、愛想の良いドライバーさんは神かも。自分には無理!
しかも私、方向音痴じゃん(爆)

なにか酷く凹んで帰宅しました。本当に自分の考えが浅かったことに凹みました。
実家の一同も満場一致で不可。
自分からタクシー会社に電話することはありませんでした。

しかし、もし他のタクシー会社だったら?あの面接官じゃなかったら?
もしかして今、私はタクシードライバーだったのかも?
歩合が稼げずに大変な思いをしている姿が目に浮かびます。
いや、もうとっくに務まらずに辞めているかも・・・。

そう考えると、この道で良かったのかも、と思えます。
不満も不安もたくさんありますが、ありがたい現状なのかもしれませんね。

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訳あって人生初の独り暮らしをすることになったのは、つい最近のことです。
数年前、東京都下のある場所で、家賃2万4千円のアパートに住んでいました。
駅から徒歩7分、間取りは3畳の台所、4畳半、6畳の畳の部屋、と広く、
その条件だけならその界隈では6万はするんじゃないでしょうか。
ただ、古い、ボロい。築50年超で歪んでいる(笑)。
そして風呂が無かった・・・。

通販でデカいゴミ用ポリバケツを購入し(ゴミペール?)、風呂替わりにしました(苦笑)。
ゴミバケツに入りまず身体を洗う。流しの給湯器でお湯を沸かし、湯桶で汲んで石鹸を流す。
しゃがめません。おけつが嵌ります(笑)。終わったらよいしょとゴミバケツ内のお湯を流しに捨てます。
その後、流しで髪を洗う。
それが毎日の入浴で、仕事が休みの日は銭湯に行ったり、お風呂を貰ったり。
この入浴法を友達に電話で話したら爆笑してました(笑)。こんなちょっと悲惨な状況を笑い飛ばせる友がいて良かった(笑)。

面白いことはまだあって。
住人がとにかく謎めいていました(笑)。
向かいの同じ形態のアパートには、中東の方が集団で住んでいたり、
その階下のお爺ちゃんは韓国語の歌を大声で歌っていました。
私の隣人のおじさんは毎日家にいるらしく、うすーい壁の向こうから音楽がよく流れてきました。
それが14時であろうが2時であろうが、お構いなしに流れてくるのです。
五輪真弓であればその日一日中五輪真弓が、
りりぃならば一日中りりぃが、
出勤前に聞こえてた歌が帰宅後も聞こえるという無限ループ。
そしておじさんは話好き。独り暮らしのはずなのに話好き(笑)。
ずーっと喋っているのです。やはり、14時であろうが、2時であろうが。
朝方、おじさんの叫び声で目が覚めたこともあります。
何か発作でも起こしたんじゃないかと心配になりましたが、
少しすると五輪真弓が流れてきて安心しました(笑)。

おじさんのことはもう、笑うしかないな、と途中から諦めました。
だって、この家賃だもの。難があって当たり前じゃん、と。

アパートから10数メートルの道路を、トラックが通ると震度3の揺れを感じます(笑)。
だけど何故か私はあのアパート、気に入ってたなぁ。
続き間の襖を取っ払うと広々として、南は一面窓で日当たりが良く、
隙間だらけなので外の空気が入ってくる。季節を連れて来る。
春先は土の匂いがして、何故か妙に落ち着いた。もう少し頑張れる、と思ってた。

あのアパート、去年壊されたって聞きました。
もう何処にもないけど、心にだけ存在するもの、また増えました。

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今は遠くに住んでいる彼が、遥々こちらまで遊びに来た去年の夏。
私の仕事の合間を縫って、しばらく釣り三昧の日々を過ごしました。

翌日の釣りの下見をするため、夜、海を見に行きました。
堤防の灯りにメバルがうようよ集まっているのを見下ろしていたら、
「あ?なんだ?」
彼の声に振り向き、その足許を見てみると、
メスのクワガタがひっくり返ってもがいていました。
「なんでお前こんなところにいるんだよ」
彼が怒ったような声でクワガタに言います。
「だめじゃん。死んじゃうよ」
雨に濡れ、すっかり弱ったクワガタを掴まえて、車の方へ歩き出します。

「なんだってあんな所にわざわざいるんだよなぁ」
ハンドル握りながら彼が言います。怒ったような、あきれたような声。
その間クワガタは私の掌でゆっくり動いていました。
少し走ったところで、立派な民家の庭先に大きな木が植わっているのを見つけました。
「よし、お前の居場所はここだ」
ふわりと彼の掌に包まれて、クワガタは無事、安全な場所に戻ったのです。

彼はいつも虫を殺しませんでした。
家に入ってきた蛾を手でふわふわと追い立て、窓の外に逃がしてやります。
どうして虫を殺さないのか?
「なんていうか罪滅ぼしみたいなもんだよ」

やってしまった悪事。大なり小なり人間であれば、避けて通れないこと。皆身に覚えのあること。
虫を生かして逃がすことなど、小さなことだと彼は言います。
そうかな?
その「罪滅ぼし」の感覚、私はとても尊敬しているんですよ。

「これ、綺麗だったからあげるよ」
丸くて白い小さな石を、ある日私にくれたことがありました。
どこかで拾ってきたすべすべした石ころ。
妙に照れくさそうにしていたことを憶えています。

その石ころは今も大切にガラスの器に入れて、玄関に飾ってあります。

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